昨年１１月、《東海道》《甲州道中》に次いで《中山道》も完歩した。
　結論から申し上げるなら、中山道は、上記２街道よりすばらしい街道歩きであった。
　理由は、すべて内陸だったために東海道より開発が進んでおらず、昔の情緒がいろいろ残されていたのである。
　東海道と中山道は、日本橋を基点とし、同様に京都まで行くのだが、距離的には東海道４９２キロに対し中山道５３３キロと４１キロ中山道が長い。
　江戸時代の両街道の人気としては、距離ばかりでなくアップダウンの多少もあり、東海道が圧倒的な人気であった。ゆえに幕府は、加賀藩はじめ全体の３分の１ほどその方面の藩に、半強制的に中山道を使わせていたようだ。
　内陸といえば甲州道中も日本橋⇔下諏訪間(２２０キロ）で内陸であるが、高遠藩など３家の大名以外使われなかった。距離的には中山道とほぼ同距離だが、使われない理由は甲州道中のほうがアップダウンがきついところにあるのではないかと思われる。また甲州道中には、ベスト１０を記すほどの情緒は残されていなかった。
　
　写真は中山道ＮＯ１に挙げた妻籠宿だが、実によく保存されていると感心させられた。今日只今江戸時代にもどって、朝な夕なに旅人が行き交うことが想像できるほどである。
　また、本陣、脇本陣、問屋場等の役割などのことについては《東海道宿場ベスト10》で述べたので、そちらを参照下さい。

	妻籠宿	長野県	東海道、中山道を通しても、文句なくここがナンバーワンだと思う。この宿場を通過したときも記したが、世界遺産にも推挙したいくらいいい宿場だ。国の伝統的建造物保存地区。
	醒井宿	滋賀県	ここの宿場は街道脇を小川が流れていて実に印象深い。東海道、中山道含め他に類例がない個性的な宿場である。家並みもしっとりして実によく残されていると感心した。
	奈良井宿	長野県	東海道でナンバーワンに挙げた関宿に似た感じの宿場。奈良井千軒といわれ木曾十一宿中一番の賑わいであった。国の伝統的建造物保存地区。
第４位	柏原宿	滋賀県	西に向かって行って２位に挙げた醒井宿のひとつ手前の宿場。宿場景観としては決して上３位までに勝るとも劣らないくらいすばらしいが、やや特長に欠けるきらいがあるのが残念。
第５位	下諏訪宿	長野県	後に中山道最高点の和田峠（1531ｍ）を、また西に塩尻峠が控え、さらには甲州道中の出発点でもあったため相当に栄えた。諏訪湖、諏訪大社、温泉も出て特色のある宿場。
第６位	馬籠宿	岐阜県	１位の妻籠宿の西に位置する。宿場はよく整備されているが、やや観光地的。最近の市町村合併で岐阜県に編入された。島崎藤村はここの本陣で生誕、小説「夜明け前」は実父がモデル。
第７位	福島宿	長野県	木曾の政治経済の中心地であった。福島関所が設けられ他所とは違う味わい。また、宿内は、木曽川の左岸段丘面に本陣がある上（かん）町と下（しも）町、横宿と段差のある宿場構成。
第８位	茂田井宿	長野県	望月宿と芦田宿間にある間の宿だが、ここをはずすわけにはゆかない。望月宿が水害にあったときは、一時本宿に昇格の話もあった。２軒の造り酒屋を中心に、なんともいえぬ情緒あり。
第９位	太田宿	岐阜県	中山道難所の一つである木曽川太田の渡しを控え、飛騨街道と郡上街道の分岐点であったため相当の旅人で賑わった痕跡が今も残る。中山道随一の脇本陣遺構は圧巻だ。
第１０位	赤坂宿	岐阜県	東から入って、まず常夜灯と大きな火の見櫓が迎えてくれるのが印象的だ。古い家並みも結構残されている。東海道本線からちょっと外れたのが良かったのかも。

　以上ベスト１０としたが、その他落合宿、中津川宿、大井宿、垂井宿、鳥居本宿など、印象深い宿場はたくさんあった。全体としては東海道同様西に行けば行くほど、旧街道の面影は濃くなってゆく。
　近々、東海道の宿場も含めた総合ベスト１０を紹介してみたいと思う。

（完）

平成２２年　２月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著