【第十話　義足の投手】

　最近私は以下の夢を見た。

　夢の場所はマツダスタジアム（広島球場）で、私が、広島カープＶＳ横浜ＤeＮＡベイスターズ戦を観戦している。（普通私が広島まで野球観戦に行くことはあり得ない）
　回も進んで８回の表、すでに両チームとも先発は下がり中継ぎ陣が登板している。
　広島のピッチャーの名前はわからないが、中南米の体のがっちりした投手が投げている。２アウトをとって３人目の打者の時、突然そのピッチャーが自分の右脚を抱えてひざまずいてしまう。
　何が起きたかと観戦している私が怪訝に思っていると、そのピッチャーの右脚がももから下が外れてしまう。すなわちそのピッチャーの脚は義足だったのだ。どうやらピッチャーの義足がばれると敵に弱みを握られると考えたチームが、ひた隠しに隠していたようだ。
　その時私は、これはパラリンピックではない。健常者同士の戦いなのだ。それを知られないように五分の戦いを挑むとは何たるすごい選手と感嘆した。
　それからそのピッチャーは、義足を付け直して次の打者を打ち取った。そして最終回は別のピッチャーが出てゲームセットになった。得点は８対２で広島の勝ち。
　それにしてもとんでもない投手が出現したものだと、ただただあきれ返ってしまった。

【第一話　ボクシング】　【第二話　トランプ】　【第三話　職場】　【第四話　暴動】　【第五話　未来の文房具】　【第六話　人魚料理】　【第七話　ライオンに襲われる】　【第八話　水に追われる】　【第九話　矢倉が歩く】
　　

（完）

r令和　３年　８月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著