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平成東海道旅日記
平成16年12月14日(火)
第8日目 府中(静岡)藤枝 約五里一丁(20.1キロ) 天候   気温 14度

 ≪府中から丸子へ≫
 9時15分、再び戦闘開始。
 先週の金曜日(12/10)に由比⇒府中間を歩いてから4日目である。しかも今度は日帰りでなく4日間通しで歩こうと思っている。通しにした理由は、すでに宿泊代より交通費が上回りはじめたからだ。かといって、ずーと歩き通せるかといえば、着替えや洗面用具など5日も6日もというには荷が重く、また体力面でもきつくなる。結局、4日間歩き通してみることにした。果たしてうまくいくやらどうやら、後は出たとこ勝負。
 そんなわけで、気分は戦闘開始に近い。
 
 府中宿は徳川家康が晩年を過ごした場所で、城下町としても規模が大きい。駅前を真直ぐ行けば明治4年に解体された駿府城公園に行けるのだが、石垣や櫓を見てもしょうがないし、4日間が頭にあり、そこをパスして丸子(まりこ)宿方面に向かう。
 歩き始めて30分、安倍川の橋の袂に着く。
 有名な安倍川餅はここが発祥という老舗・石部屋に寄ってくだんの安倍川餅を注文したら、後15分待てと言われた。有名な餅だからと思ったが、たった15分ぐらい早く始めるサービス精神がないのなら、特別食べたいわけでもないのですぐ店を出て安倍川橋を渡った。
 
 だんだん昔の街道の雰囲気が出てきた家並みを見ているうちに、はや丸子宿に着く。
 ここではどうしても寄りたい店がある。右の写真の丁子屋という名物のとろろ汁を食わせる店である。
 松尾芭蕉も「梅若菜丸子の宿のとろろ汁」と詠んだほど有名。
 是が非でも食さねばと、11時の開店を待って1番で入店してとろろ汁定食≠たのんだ。ほどなく出てきた定食は、麦飯少なめとろろをたっぷりかけて食えと教えられ、その通りにして食べたがこれがうまい。評判どおりだと感心しながら2杯目3杯目と進めたら、何故だか最初の1杯目ほど美味くはなく、なんか変な感じで食事を終えた。

 ≪丸子から岡部へ≫
 結局、期待ほどのこともなく店を出たのは11時25分、岡部宿に向かう。
 このあたりも国道1号線をジグザグに何度か渡りながら宇津ノ谷峠に向かったのだが、岡部バイパスのトンネル手前で1国と別れ、峠の間道へと入っていった。私は今1国(いちこく)≠ニ言ったが、静岡県に入ってからは地元の人に道を聞くと国1(こくいち)≠ニいうので、若干のとまどいはある。本当は国1≠ェ正解だと思うと同時に、所変わればとつくづく思う。
 宇津ノ谷峠への道は豊臣秀吉が小田原の北条氏攻略のために開いたと言われる難所のため、細く険しい道を分けてゆく。
 峠手前に宇津ノ谷の集落があるが、往時を偲ばせるいい家並みが斜面沿いに続いていた。
 家の軒先の無人売店でみかんを売っていた。特に先日の蒲原辺りからみかんの無人売店が目立って多くなったが、これが非常に安い。2Lもしくは3Lサイズが5〜7個ぐらいで100円である。正直10袋も買って宅急便で自宅へ送りたいぐらいだ。そこで1袋買って歩きながら食べ、多少の息切れをさせながら宇津ノ谷峠を越した。

 袋には5個のおいしいみかんが入っていたのだが、食べきれず2個はぶらぶら手で持って歩いていたところ、ちょうど車で休んでいるらしいおじさんがいたので、持っていてもじゃまだから「これ食べません?」といって2個のみかんをおじさんに手渡した。おじさんは素直に「ありがとう」といって受け取ってくれた。
 話はそれで終わらない。それからしばらくすたすたと峠道を下っていたら、さっきみかんをあげたおじさんが、車でわざわざ寄ってきて「さっきはご馳走様」と手厚く礼を言われたには驚いた。持っているのもわずらわしいみかん2つでこんなに礼を言われるとはなんたる気風、といささか戸惑った。
 つづいて今度は、向かいから自転車で走ってきた高校生ぐらいの女の子に、「こんにちは」と挨拶された。当然見知らぬ子である。ここいら辺りの人情がそういうことなのかと思っていたら、これが実はその後浜松手前まで続いたのである。遠州の気風の良さに感心させられた。

 ≪岡部から藤枝へ≫
 13時10分、岡部宿着。15分休憩。
 標識に、岡部宿・江戸へ48里、京へ78里とある。まだ半分も来ていないことを思い知らされる。

 旧東海道は、岡部から藤枝にかけて西というより南西に向いて走っている。それに平行して相変わらず国道1号線が寄り添ってきている。その1号線と藤枝バイパスが交差しているところを渡ると、「従是西巌村領、横内地区」と大書した標識があった。そして家々に大きな看板で昔の職業と名前が書かれていた。たとえば、、作さん、源さん、兼ちゃんの個人名から鍛冶屋与三郎、油屋などなどその一画の成り立ちが手に取るように分かった。
 街道の保存を売りにしている地域もいろいろだなと感心させられた。

 真直ぐ伸びた藤枝宿の東木戸跡を通過して、15時05分に本日の旅を終了することにした。まだ日が高いので次の島田宿とも考えたが、今日はこれから宿探しもしなければならないのでここで切り上げることにした。

 出発時間 9時15分  到着時間 15時05分 所要時間 5時間50分
 本日の総歩数(府中⇒藤枝間) 34,813歩
 
ーつづくー

平成16年12月末日                             dokkou著
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