最近、以下の出来事にあった。
　家の近所の道を歩いていたら、高齢の女性が私のところに来て「助けてください！」といった。
　どうしたのですかと尋ねれば、傍にいる女性から道を聞かれたのだが、うまく話が通じず難儀をしているという。
　その女性をよく観察すれば、白い杖を持った全盲の人だった。そしてかなりいきり立っている。どうやらこれまで交番へ行く道を教えてほしいと言っているのだが、何人かの人に尋ねたが本当の道を教えてくれないとかなり立腹しているらしい。
　私にもうまく話ができるかどうかはわからないが、兎に角もう一度話してくださいと言って盲人の女性に聞けば、何人かの人に交番への道を尋ねたが、みんな違う方向を教えると言っていた。
　交番は１５０ｍほど先の交差点渡った反対側にある。
　そこで私は、まっすぐ１００ｍほど行くと広い通りに出るから、それを左折して１０ｍほどで大きな交差点に着く。そしてその交差点を渡って、さらにすぐまた交差点を渡って１０ｍほど行くと交番です、と言って、その女性を１００ｍ先に向かうべく方角に向かせ、歩道の縁石を白い杖で確認させ、広い通りのほうへ歩かせた。
　女性はまだぶつぶつ言っていたが、それでも何とか縁石に杖をたたきながら交差点に向かって行った。
　
　話はそれまでだが、助けてくださいといった高齢女性は、それでも心配だったらしくしていたが、何とかなってホッとしていた。
　その後私は考えたのだが、どうしても急がなければならない用事が私にあった訳でもないのだから、１００ｍ先の交差点まで、盲人の女性の手を引いて案内してやればよかったと。とっさの判断があまい自分にいささか腹が立った。

（完）
令和　６年　１月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著