最近、ある株相場師が「天井は求めない」と言っていたのを思い出した。
　これは当然ながら、株の相場においてまだ株は上がるだろうと天井ぎりぎりまで期待して、最後は株の下落で儲けを少なくしたり損をしたりすることを戒める名言である。すなわち欲の皮を張りすぎるなということ。本当の相場師は常に隠忍自重しているのである。
　
　この話はなんにでも通用すると思っている。
　例えば宝くじを買っても、１枚３００円ども１０億円を夢見るより、一桁下の１億円を狙ったほうがより確率は高い。ただし夢を買うのだからそれでいいのだという人は別の話だが。

　私は、自慢ではないが、あまり賭け事では負けない。
　もう麻雀もやらなくなったが、麻雀でも、もしその日がついてないときは、安上がりに徹して負けを小さくすることを心掛ける。そしてツキのある時でもほどほどの勝ちで納めておく。それが賭け事の鉄則だと確信している。それでは面白くなかろうという人は、勝負の厳しさを本当にわかった人ではないと思う。

　でも、天井を求めたくなる誘惑は常に心を揺さぶってくるから、これに打ち勝つことは大変ではある。

（完）
令和　５年　３月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著