先日、息子の家族４人が我が家に遊びに来た。
　家族構成は、息子夫婦に小学２年の女児と保育園年中さん４歳の男児である。

　その日の雑談の中で息子が、「近日中に、保育園に移動動物園が来る。そして４歳の息子はライオンに餌をやると張り切っている」という話が出た。
　孫はライオンがどれほどの猛獣かもよく分からず、ただ餌をやるのか聞いてみれば、にこにこしながら「うん」といっていた。
　話はそれまでで別の話題に移ってしまった。
　息子たちが帰った後、私は妻との会話の中で、孫がどんな顔をして餌をやっただろうかとあれこれ想像したりした。

　それからまた後日に、息子が一人で我が家に来た折、孫がライオンに餌をやってどんな感想だったか聞いてみたたら、「たかが保育園訪問の移動動物園にライオンが来るはずないだろう、ウサギにカメに金魚にハツカネズミ、せいぜいそんなものだ」と軽く一蹴されてしまった。

　それでは孫がどんなにか期待していたのにかわいそうではないかといえば、そんなこととっくに忘れているという。
　考えてみれば、保育園にバスやトラックなどに積んで運べる動物など知れている。ライオンやトラなど来るはずもない。ライオンに餌をやることにハラハラドキドキしていたのは私たち夫婦だけあった。　　　

（完）

令和　２年　３月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著