時期的にはちょっと遅いかもしれないが、子供のころ、転校した通学路に草ぶき屋根の家があり、その家の塀から大きな金木犀の木が枝を茂らせ、道端に真っ黄色に花がこぼれていた情景が忘れられない。そして何とも香しい芳香があたり一面に漂っていた。私は、都会から来た転校生だったので、その時初めて金木犀のニオイを知った。そしてもしかしたら天国とはこんなニオイのするところかもしれないなどと思ったりしたものだ。

　話はまるで変わる。
　公共のトイレなどに入ると、入った瞬間何とも言えないニオイがすることがある。そのニオイの元が、安物の芳香剤をしみこませたトイレットペーパーであることが多々ある。
　私は、この安物の芳香剤をしみこませたトイレットペーパーのニオイが耐えられないほどいやだから、自宅のトイレットペーパは必ず無臭のものを買ってくる。

　誰にでもニオイの好き嫌いはある。多分前出の金木犀のニオイでも嫌いな人はいるだろう。またどんなにいい匂いだと多数の人が言っても、ある少数の人はそのニオイを受け付けない人がいるはずだ。
　したがって、公の場ではニオイは絶対に無臭がいい。
　　

（完）

令和　２年１１月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著