【第一話　ボクシング】

　最近私は、以下の夢を見た。
　どうやら自分はボクシングのセコンドをやっているようだ。選手も二人いるから、一方は味方一方は敵であることは当然である。ただし、二人の選手とも私は見たこともない顔だ。
　どこの会場だかもわからない。場内の空気は煙草の煙などもまざってなんだか結構騒々しいから、場末の会場であろう。観衆がどれだけいるのかもわからない。　
　やがてリング上で選手紹介があり、レフリーが試合前の注意を選手にして、両者はグラブを合わせて試合開始のゴングが鳴った。
　と、その瞬間、私がセコンドをしている選手が目にもとまらぬ速さで相手に飛びかかり、一撃のもとに相手を倒してしまった。そして相手は、ロープに引っかかって伸びている。その間１秒もなかったであろう。うんもすんもない、すなわちノックアウトだ。レフリーはテンカウントも数えないで呆然としている。
　普通、ゴングが鳴ると両者は一応あいさつ代わりにもう一度グラブを合わせてから対戦を始めるのにそれがない。
　それを見た私は、倒した味方の選手にそれはないだろうそれはモラルに反する、と思う。
　それはないだろうと思ったことを察知した選手は、私に向かって「ゴングが鳴った瞬間に相手は下を向いて隙を見せたからそのチャンスを逃さないで打って出ただけだ」と弁解した。
　場内はますます騒然としている。

　私の夢はここまでである。
　しかしなぜこんな夢を見たのだろう。若いころはボクシングのテレビもよく見たが、最近はまったく興味がわかないからほとんど見ない。もちろん自分自身ボクシングをしたこともないしセコンドなどの経験もない。
　もし考えられるとしたら、最近久しぶりで家周りの多少大きな買い物をしたことに起因しているかもしれない。業者を呼んで見積もりを取り、その見積もりの価格について昔の営業経験を思い出しながら、業者と丁々発止のやり取りをした。そんなことが遠因で夢が闘争的になったのかもしれない。

　この夢は空想ではない。本当にこんな夢を見たのだ。今後も面白そうな夢を見たら第二話・第三話と話したいと思う。

（完）

平成　２９年　５月　１日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DOKKOU著