無性に、浴びるほど魚を食べたくなることがある。
もうそんな気分のときは近隣のスーパーや魚屋では物足りず、どこかの海岸か漁港などのレストラン、食堂へ行くか、もしくはピチピチ跳ねてる鮮魚を買ってきて、思う存分食さないと満足することができない。
幸いにして私の住まいが横浜だから、ちょっと足を伸ばせばいくらでも海があるので、それほど苦もなくそんな場所に行くことが出来る。
たとえば安いレストラン、食堂で言えば、横浜東神奈川にある県中央卸市場内のボリューム満点の海鮮食堂や寿司店、横須賀市場に隣接して市場の人も利用している食堂とか、三浦三崎まで足を伸ばせばいくらでも新鮮な魚介類を食すことが出来る。
また、漁港に隣接して廉価な魚介類を求めるなら、逗子の先のあぶずり港の朝市や金沢文庫柴漁港の昼市、三崎の朝市などこれまたいくらでもある。
今回は三浦半島金田漁港に行って、少々魚を仕入れてきたので、金田湾朝市の様子を紹介する。
金田湾朝市は、毎週日曜日の午前６時から魚が売切れるまでやっている。といってもほんの３０〜４０分でほどで魚はほとんど売りつくされてしまうので、そんなに悠長に構えて入られない。
６月８日（日）午前４時半には女房と車で家を出たのだが、この時期夜明けは早く、すでに車のヘッドライトは必要ないくらいだ。
金田漁港は三浦半島のだいぶ剣崎寄り、京浜急行の三浦海岸駅から車で１０分ほどかかる。
平日日中だと家から高速道路を使わなければちょっとつらいが、今日は日曜日、おまけに明け方だから車はスイスイ、結局一般道のみの走行で１時間１５分ほどで着いてしまう。
走り始めてしばらくして雨が降り始めた。
「ゲッ！雨？」
そんなはずはない、梅雨時だが昨日も晴天、今日の予報も降水確率１０％だから出かけてきたのに……。
金田湾朝市の買い物のコツの一つが、前日および当日は好天がいい。なぜなら前日から当日夜明けにかけての定置網漁の魚が販売されるからだ。
そんなことをぶつぶつ考えながら野比の先で下浦海岸に出たが、そぼ降る雨で見えるはずの対岸の房総半島もまったく見えない。
予定通り５時４０分には金田漁港に着いた。
大きな駐車場があり、車が数十台は止められるが、６時ぎりぎりに着くと車は満車状態で駐車に苦労するから少々早目がいい。
雨はまだ降り続いているので、今日は建物の中だけで販売するらしい。
すでに商品は並べられているが、売り始めるのは６時のプアーという昔聞いた豆腐屋のラッパのような合図のフォンが鳴ってからだ。
それまでにどれが買いたいかをあらかじめ下見をしておく必要がある。
これまたここでの買い物のコツだが、フォンがなると同時に戦場の様なすさまじい様相を呈する。そして人気商品はあっという間に売切れてしまうので、まずはじめに下見を一通りしておいて、一番買いたいもののところでフォンを聞くようにする。
６時の合図のフォンが鳴って、いきなり場内が活気づいた。
この日目に付いたものを少々列挙すれば、
活スズキ、活ヒラメ、活タコ、活黒鯛、活サザエ、活アワビ、真鯛、キンメダイ、カツオ、生マグロ、マグロ粕漬け、マグロ味噌漬け、目刺し、生ホタテその他もちろん全部天然ものだ。その他キャベツや大根、ジャガイモなどの野菜類もある。
今日のわれわれの第一目標は活タコ。早速２匹を買った。小振りだが２匹で１７００円、私にはタコの値段がよく分からないが女房は安いを連発する。
次に狙っていたのが小粒の生ホタテ貝柱だが、数が少なかったせいかあっという間に売り切れていた。
この朝市には食堂経営者なども来ているので、安くていいものはさっさと売り切れる。
あとは暫時欲しいもを適当に買った。といってもしがない年金生活者、それほどのもを買ったわけではない。
ちなみに買ったものを挙げれば、 活タコ２匹１７００円、めざし６連５００円、シコイワシ一笊１００円、松輪さば２匹７００円、マグロ味噌漬け４枚４００円、干しのり１０帖３５０円、たくあん１本２００円、ジャガイモ２００円など、
〆て全部で合計４０５０円なり、とまあ安物ばかり。
サザエを買おうかと思ったが、どうも通常より高そうなのでやめにした。
なんだかんだのあっという間の３０分が過ぎた。
まだ食事もしてないので、食べようと思えば施設の２階が食堂で新鮮な魚の朝定食を食べられるが、家に帰って魚を食べるのだからそれはしない。
家に着いて、早速お隣に少々おすそ分けして喜んでもらう。
さて、その日の昼食メニューは、タコ飯、タコ刺身、タコから揚げに松輪さば塩焼き、目刺しと、魚、魚、魚そしてビールだ。
とくに目刺しが絶品であった。
ともかく、金田湾朝市には年に数回行くが、各地の朝市によくある観光客ずれもしてなく、素朴で、これぞ朝市感じが私は好きだ。
（完）
平成２０年 ７月 １日 DOKKOU著
